クラウド移行が進む中、企業のIT環境はオンプレミスとクラウドの両方が混在するケースが一般的です。ユーザーは「どこにアプリケーションがあっても同じようにアクセスしたい」というニーズを持っています。
この課題を解決するのが ハイブリッド ID(Hybrid Identity)です。オンプレミスとクラウドの境界をなくし、共通の認証基盤を提供することで、利便性とセキュリティを両立します。
本記事では、ハイブリッド IDの基本概念と、Microsoft Entraによる実現方法をわかりやすく解説します。
ハイブリッド IDとは?
ハイブリッド ID(Hybrid Identity)とは、オンプレミス環境とクラウド環境の両方で共通のIDを提供する仕組みです。
企業のIT環境は完全にクラウドへ移行するわけではなく、業務アプリや基幹システムなど、オンプレミスに残るものも多くあります。そのため、ユーザーが複数の認証情報を使い分けるのは非効率であり、セキュリティリスクにもつながります。
ハイブリッド IDを導入することで、次のようなメリットがあります。
- 利便性の向上:ユーザーは一つのIDでオンプレミスとクラウドの両方にアクセス可能
- セキュリティ強化:認証基盤を統一することで、ポリシーや多要素認証を一元管理
- 運用効率化:管理者はID管理を集中化でき、運用負荷を軽減
Microsoftはこの仕組みを Microsoft Entra ID(旧Azure AD)を中心に提供しています。
ハイブリッド IDの仕組み
ハイブリッド IDは、プロビジョニング(Provisioning)と同期(Synchronization)の2つの要素で成り立っています。
- ディレクトリ間プロビジョニング
Active Directoryに存在するユーザーをMicrosoft Entra IDに作成する仕組みです。これにより、クラウド側で同じIDを利用できます。 - 同期
オンプレミスのユーザーやグループ情報をクラウドと一致させる役割を担います。これにより、属性やパスワードの整合性が保たれます。
この2つを組み合わせることで、オンプレミスとクラウドの境界をなくし、ユーザーにシームレスな認証体験を提供します。
Microsoft Entra Cloud Syncの役割
ハイブリッド IDを実現するための代表的な方法が Microsoft Entra Cloud Syncです。
Cloud Syncは、軽量なプロビジョニングエージェントを使い、Active DirectoryとMicrosoft Entra IDを接続します。
構成情報はクラウド側で管理されるため、運用負荷が低く、スケーラブルな設計になっています。
さらに、Cloud Syncは SCIM(System for Cross-domain Identity Management)仕様を採用しています。これは、異なるIDドメイン間でユーザーやグループ情報を標準化して交換するための仕組みで、プロビジョニングの事実上の標準となりつつあります。
導入のポイントと注意点
ハイブリッド IDを導入する際には、次の点を確認します。
- エージェントの設置場所:オンプレミスまたはIaaS環境に配置可能
- ネットワーク要件:Microsoft Entra IDとの通信が確保されていること
- セキュリティ設定:認証ポリシーや多要素認証の適用を検討
公式の情報ではありませんが、運用負荷を減らすためには「同期対象を絞る」ことも有効です。必要なOUやグループだけを同期することで、管理がシンプルになります。
まとめ
ハイブリッド IDは、オンプレミスとクラウドの境界をなくし、ユーザーにシームレスな認証体験を提供するための仕組みです。
Microsoft Entra Cloud Syncは、その実現を支える重要なサービスであり、クラウド移行を進める企業にとって不可欠な選択肢です。
クラウド移行を検討している企業は、まずハイブリッド IDの仕組みを理解し、Microsoft Entraの導入を計画することをおすすめします。
参考リンク
https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/identity/hybrid/whatis-hybrid-identity
https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/identity/hybrid/cloud-sync/what-is-cloud-sync