前回の記事では、私がユーザビリティを重視するようになった理由について書きました。
利用者が迷わず使えるホームページを考えるようになった頃、私は別の疑問も持つようになりました。
「なぜ、このサイトは検索されるのだろう」
ということです。
当時の私はSEOを勉強していたわけではありません。
検索順位を上げる方法を研究していたわけでもありませんし、検索エンジンの仕組みを詳しく理解していたわけでもありませんでした。
それでも、制作したサイトには少しずつ変化が現れていました。
検索経由で訪れる人が増え、日本各地から問い合わせが入るようになったのです。
今振り返ると、私はSEOという答えを探していたのではなく、利用者にとって正しいホームページを作ろうとしていたのだと思います。
法人サイトでは、まず要求を整理する必要があった
ホームページ制作を始めた頃の私は、「どうやって作るか」を考えることが中心でした。
しかし法人案件を受けるようになると、それだけでは仕事になりませんでした。
お客様からはさまざまな要望が出てきます。
- 「商品をもっと知ってほしい」
- 「問い合わせを増やしたい」
- 「高齢者にも使いやすくしてほしい」
- 「海外からの問い合わせにも対応したい」
- 「社内で更新しやすくしてほしい」
どれも正しい要望です。
しかし、そのままではホームページの設計にはなりません。
制作側はまず、
「この会社はホームページで何を実現したいのか」
を整理する必要があります。
今で言えば 要求定義 に近い作業です。
当時の私はそうした言葉を意識していたわけではありませんが、実際には同じことをしていました。
法人サイト制作は、パソコンに向かって HTML を書く前から始まっていたのです。
要求を要件に変えるのが制作側の仕事だった
要求を整理しただけでは、まだホームページはできません。
次に必要なのは、
「その要求をどう実現するのか」
を決めることです。
例えば、
「商品情報を探しやすくしたい」
という要求があれば、
- 商品カテゴリーを分かりやすく整理する
- 商品ごとの情報を統一する
- 問い合わせ先を見つけやすくする
といった具体的な要件に変えていきます。
また、
「誰でも利用できるホームページにしたい」
という要求であれば、
- メニューを分かりやすくする
- 読み上げソフトでも理解できる構造にする
- MacとWindowsの両方で動作確認を行う
といった要件になります。
お客様の要望を聞くだけなら誰でもできます。
しかし、その要望を実際の設計に落とし込むことは簡単ではありません。
今振り返ると、私はホームページを作っていたというより、
要求を整理し、要件に変換する仕事
をしていたのだと思います。
要件を積み上げた結果、「正しいホームページ」ができていった
要件が決まると、いよいよ制作です。
しかし、ここでも私が考えていたのは SEO ではありませんでした。
- 利用者が迷わないこと
- 運用しやすいこと
- 将来修正しやすいこと
そうした実務的なことばかり考えていました。
その結果、ホームページには自然と次のような要素が増えていきました。
- 分かりやすいメニュー構成
- 整理された情報設計
- 適切な見出し構造
- 正しいHTML
- 軽量で表示の速いページ
- 管理しやすいソースコード
制作中は検索順位のことを意識していたわけではありません。
ただ、お客様の要求を満たし、利用者が使いやすいホームページを作ろうとしていただけでした。
正しいHTMLを書くことにもこだわっていた

当時のHTMLはほとんど手書きでした。
そのため私は、できるだけ分かりやすいコードを書くようにしていました。
- ページタイトルは内容に合わせる
- 見出しには適切な見出しタグを使う
- 会社概要なら会社概要だと分かる構造にする
- 商品紹介なら商品紹介だと分かる構造にする
また、後から修正する人のためにコメントアウトも積極的に残していました。
ホームページは公開して終わりではありません。
数年後に別の人が修正するかもしれませんし、担当者が変わることもあります。
だからこそ、コードそのものが設計書の役割を持つべきだと考えていました。
制作が終わると、W3Cの検証ツールを使ってHTMLの文法エラーも確認していました。
これは SEO 対策というより、良いホームページを作るための基本作業でした。
建物に基礎工事が必要なように、ホームページにも正しい土台が必要だと思っていたのです。
軽くて分かりやすいサイトを心掛けていた
楽器を扱う輸入業者のサイトでは、多くの商品写真を掲載していました。
しかし写真が増えるほどページは重くなります。
当時は今ほど回線速度も速くありませんでした。
そのため、
- 画像サイズを調整する
- 不要なコードを書かない
- 表示速度を維持する
- できるだけシンプルな構成にする
といったことを意識していました。
- 派手な演出よりも、まず正しく表示されること
- 利用者がストレスなく目的の情報へたどり着けること
今振り返ると、これもユーザビリティの一部だったのだと思います。
それでも検索から問い合わせが来るようになった
こうした制作を続けているうちに、少しずつ結果が現れ始めました。
検索経由の訪問者が増えていったのです。
特に楽器を扱う輸入業者のサイトでは、日本全国から問い合わせが入るようになりました。
もちろん、それがすべてホームページの作り方だけによるものだとは言い切れません。
商品の魅力や市場環境など、さまざまな要因があったはずです。
それでも私自身の経験としては、
利用者が探しやすいサイトを作ろうとしていた結果として、検索エンジンからも評価されるようになった
という感覚がありました。
私は SEO という答えを先に見つけたわけではありません。
利用者にとって正しいホームページを作ろうとした結果として、後から SEO につながっていたことに気付いたのです。
後になってGoogleも同じ方向を見ていることを知った
現在では SEO という言葉は広く知られるようになりました。
検索エンジンの仕組みも、私が制作を始めた頃とは大きく変わっています。
後になって知ったことですが、Googleも長年、
検索エンジンのためではなく、利用者にとって役立つコンテンツを作ること
を重視してきました。
私は当時、その考え方を知っていたわけではありません。
SEO を学んで正しいホームページにたどり着いたのではなく、正しいホームページとは何かを考え続けた結果として、後から SEO につながっていたことに気付いたのです。
今振り返ると、その考え方は Google が目指していた方向とも大きく離れていなかったのだと思います。
今振り返って思うこと
現在は、
- SEO
- UX
- アクセシビリティ
- Core Web Vitals
- AIによるコンテンツ生成
など、さまざまな言葉があります。
技術も大きく進化しました。
しかし、法人サイト制作の現場で考えることは昔も今もあまり変わっていないように思います。
- まず、お客様の要求を整理する
- それを具体的な要件へ落とし込む
- そして利用者にとって分かりやすい形で実現する
AI がコードを書けるようになった今でも、
「何を作るべきか」
「誰のために作るのか」
を決める仕事は人間にしかできません。
私は SEO を学んだから正しいホームページにたどり着いたのではありません。
法人サイト制作を通じて、要求定義と要件定義を繰り返した結果として、正しいホームページとは何かを考えるようになりました。
そして、その考え方は今も変わっていません。
ホームページ制作の基本は、昔も今も同じです。
検索エンジンのためではなく、利用者のために作ること。
その積み重ねが、結果として SEO にもつながるのではないかと私は考えています。
